このたび日仏社会学会創設六十周年(現実には七十周年をすぎている)記念事業として恒星社厚生閣から日仏社会学会叢書を発刊する運びとなった。慶賀至極のことである。
そもそも一度に五巻刊行という企画は日仏社会学会にとっては勿論のこと、日本社会学界においても全く稀有のことである。それとともにこの刊行を快く引き受けて下さった恒星社厚生閣にあつく御礼を申しあげたい。
本叢書の構成は第一巻が『デュルケーム社会学への挑戦』、第二巻は『フランス社会学理論への挑戦』、第三巻が『ブルデュー社会学への挑戦』、第四巻『フランス社会および社会学への挑戦』、第五巻『共生社会への挑戦』となっている。この構成内容をみて読者が先ず気づくことは、第一にデュルケーム、ブルデューの両巨匠の学説についてのみならず、極めて多岐にわたって、フランスの多様な社会学者の学説の論評、日仏両社会への社会学的考察が眼につくこと、第二に全巻を通じて「挑戦」というタームが使用されていること。このことは本叢書の意欲が如実に現れていることを意味する。
執筆者は一瞥してわかるようにベテランの社会学者を初めとして、極めて数多くの少壮気鋭の社会学者を含んでいる。このことは、その内容が甚だバラエティに富んでおり、かつその内容も豊富で、日本社会学界に大きな刺戟を与え、日本社会学界を活性化しうるものと信じる。
そもそも日仏社会学会は日本の社会学会では最古のものである。これまで日仏双方の社会学者の交流、共同発表などを行なってきたが、その組織は学会というには程遠かった。またフランスの社会学者のメンバーは皆無であった。そこで自画自賛になるが、私が会長に就任してから理事を選挙制にし、正式の理事会を発足させて学会の活動方針その他の事項を理事会の合議制で決定することにした。またフランス側と話し合ってフランス側のメンバーが生まれた(そのなかには著名で、日本でよく知られているフランス人社会学者もメンバーになってくれた)。このことで文字通りの日仏社会学会が発足した。また、その研究成果を世に問うため「日仏社会学会年報」を発刊し、日仏両国の社会学者が執筆しており、毎年輝かしい業績をあげて今日に至っている。
またシンポジウムは日仏社会学会の目玉であるが、これは三年に一度目仏交替で行なっている。しかし私の会長就任前はシンポジウムのテーマは一回毎に変わり、学問的成果を十分に挙げることはできなかった。そのため、日仏双方でシンポジウムのテーマを決めたら、数回同一テーマで研究を深めていくこととし、社会福祉関係のテーマで十年以上にわたってシンポジウムを開催した。その結果、研究も深味、重味をまし、両国の社会学者の相互理解も強まり、日仏双方の文化交流にも大きな貢献をすることができた。
今年も十月中旬からパリ、ナンシーでシンポジウムを開催した。日本側、フランス側から十名の社会学者が発表し、相互の活発な論議が展開した。大きな成果を得たと信じる
会員の数も次第に増えている。未だ小規模な学会といえども、その内容の充実、活発な活動によってますます日仏相互の理解、相互の社会学の理解が深まり、日仏の文化交流に多いに貢献しうることを信じる
二〇〇四年十一月十五日 日仏社会学会会長 佐々木交賢
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